【送迎加算について】2024年度報酬改定後の放課後等デイサービスを考える

2024年3月26日(火)
【送迎加算について】2024年度報酬改定後の放課後等デイサービスを考える

2024年度の放課後等デイサービスにおける報酬改定に伴い、 様々な変更点が示されました。
本記事では報酬改定に伴う基本報酬の確認から始まり、 報酬改定後の加算での運用例、 さらに基本報酬以外に取得できる加算について探っていきます。
その中でも送迎加算は運営者や利用者にとって注目すべきポイントの一つとなっており、 その取得の重要性や注意点についても確認していきます。

1. 送迎加算っていくらなの?

まず、最初に送迎加算がいくらになっているのかについて、 厚生労働省の資料を元に説明をいたします。 障害度や症状、送迎場所によって細かく分かれておりますので、 詳しく知りたい方は下記の厚生等同省の資料をご確認ください。
参考: https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/000678627.pdf

送迎加算の単位数

〇障害児(重症心身障害児を除く) 1人につき片道54単位
〇重症心身障害児 1人につき片道37単位

上記に追加で取得できる要件

上記の2パターンとも、同一の敷地内又は隣接する敷地内の建物との間での送迎は、所定単位数の70%を取得できます。
また、障害児(重症心身障害児を除く)の送迎で、 喀痰かくたん吸引等が必要かつ、 事業所の看護職員が伴なった場合の送迎は追加で37単位を取得できます。

2. 送迎加算の取得における注意点

放課後等デイサービスの送迎加算は、 基本的に送迎を実施したことに対して加算が得られるようになっています。
ただし、以下のような状況では送迎加算を取得できないので注意が必要です。

送迎加算を取得できないパターン

〇送迎がキャンセルになった
〇親御さんが送迎した
〇事前に個別支援計画書へ送迎の必要性や場所などを明記していない
〇支援時間が30分未満であった

3. 送迎加算は取得するべき?

2024年度の報酬改定後の加算要件において、 基本報酬以外で取得できる要件の中で、送迎加算は最も検討しやすいと思っております。 と言いますのも、障害児(重症心身障害児)1人につき、 片道の送迎だけで54単位取得できますし、 運転免許証があれば基本的に誰でも担当することができます。
もちろん送迎をしない事業所もあって良いと思いますし、 「専門性にフォーカスする」というポリシーをお持ちの事業所ですと 送迎加算の取得は優先度が下がるでしょう。
そのため、「送迎加算を取得するべきかどうか」に関しては 「事業所の方針による」という回答になるのですが、 送迎をするかどうか迷っている事業所であれば、前向きに検討しても良い加算かと思います。

4. 2024年度からの報酬改定に伴う加算の確認

さて、前述の送迎加算の話を踏まえて、実際の運用がどうなるのかをシミュレーションしていきます。
まずは、改めて2024年度からの改定に伴う基本報酬を確認しておきましょう。
イメージしやすいように「10名定員」を想定して記載していきます。

10名定員の事業所の場合(重症心身障害児を除く)

【平日】

区分1:30分以上 1時間30分以下574単位
区分2:1時間30分超 3時間以下609単位

【休校日】※区分3は学校休業日のみ算定可能

区分1:30分以上 1時間30分以下574単位
区分2:1時間30分超 3時間以下609単位
区分3:3時間超 5時間以下666単位


また、上記の支援時間を超えて支援を行った場合の 「延長支援加算」についてもまとめておきます。 多くの事業所の支援状況で適応される事項かと思います。 細かな適応条件もございますので、改めてご確認ください。

延長支援加算

【平日】※3時間1分以上の支援からが該当

1時間以上 2時間未満92単位

【休校日】※5時間1分以上の支援からが該当

2時間以上123単位

延長支援加算が適応される条件

  • スタッフ2名以上を配置している
    (内1名は児発官や資格者などの人員配置基準を満たす者)
  • 事前に個別支援計画などで延長支援の計画を示し、保護者からサインをもらっている
  • 支援前後での合算した延長時間が1時間以上である
    (支援前後での延長時間がそれぞれ1時間未満であれば切り捨て)

5. 報酬改定後の加算での運用例

前項の基本報酬を踏まえて報酬改定後の加算で実際に運用することをイメージするために、 いくつかシンプルな運用例をあげてみます。

利用者1人当たりの1日の加算例

〇平日に2時間お預かりした場合
 →区分2の609単位
〇休校日に7時間1分お預かりした場合
 →区分3の666単位 + 延長2時間 123単位 = 計789単位

1日平均5人の利用者がいた場合の月の加算例

〇平日の月曜~金曜の週5日間開所した場合(1カ月で20日の稼働とする)
 →区分2の606単位 × 5人 × 20日 = 60900単位
〇月曜~土曜(土曜だけ休校日)を開所した場合(土曜が月4回あるとする)
 →60900単位 + 区分3の666単位 × 5人 × 4日 = 74220単位


「平日の月曜~金曜の週5日間開所した場合」の内容で実際に運用しようとすると、
収入だと10倍して609,000円になり、人員配置としては児発官とスタッフを2人、休みが出た時のためにさらに1人を確保する必要があります。
収入と人件費をざっと計算しただけでも運営的にはかなり厳しい事がわかるでしょう。

さらに休校日も開所し、「月曜~土曜(土曜だけ休校日)を開所した」という条件で計算してみました。
休校日分の単位が上乗せになっていますが、その分人件費やスタッフの負担は増えることになります

これらのシンプルな運用例(上述の基本報酬のみ)だと、 事業所によっては損益分岐点として利用者の人数が1日平均7~8人とかなり厳しくなってしまうでしょう。

6. 基本報酬以外に取得できる加算

ここまで出てきた基本報酬だけのシンプルな運用例ですと、かなり厳しいことがわかりました。
そのような時は、以下のような追加の加算を検討することができます。

追加で取得できる加算の一例

〇送迎加算 54~91単位(重症心身障害児を除く)
〇加配加算 36~187単位
〇専門的支援加算 49~123単位
〇福祉専門職員加算 6~15単位



基本報酬とこれらを合算して取得する事を目指します。
その他にも、子どもによって取得できる加算や 関係機関との協力や家庭連携加算など積み上げるとそれなりの単位数になります。
また、スタッフのために処遇改善加算も押さえておきたい所です。 福祉専門職員加算を取得できると処遇改善加算も増やせます。

そして前述の通り、これらの加算の中でも「送迎加算」は比較的検討しやすい 加算要件なのかなと思っております。
より多くの加算を取得できれば、先ほどお伝えした損益分岐点は 利用者の人数が1日平均4~6人程度まで改善するのではないでしょうか。

7. とはいえ送迎は大変な面もある

上述のように送迎加算は他の加算と比べても担当できる人員が多いため、 導入を検討する事業所も多いでしょう。
しかし、送迎サービスはそれなりに大変な業務でもあります。
例えば、送迎中にトラブルが発生した場合は迅速に対応する必要がありますので、 この辺りも送迎業務の大変なところでしょう(参考:【必見!】放課後等デイサービスの送迎中のトラブルとその対処法)。

また、「保護者との送迎時間や場所に関してのやりとり」や「送迎表の作成・管理」は 毎日の業務となりますので、スタッフにはそれなりに負担がかかります。
こちらに関しては、事項でスタッフの負担を減らせる便利なツールをご紹介いたします。

8. 送迎スケジュールを管理できるツール

私たちが開発した【送迎スケジュール管理アプリ pick!】は 保護者が送迎を予約する形で送迎情報を入力し、 事業所側がそれらを確認しながら送迎スケジュールを管理することができるアプリです。
保護者からの送迎の時間や場所の聞き取り、 送迎スケジュール表の作成や管理などといった、 送迎サービスに関わるスタッフの負担を 軽減できるアプリとなっております。
30日間の無料トライアル付きでご利用いただけますので、 ぜひお試しください。

まとめ

いかがでしたでしょうか?
2024年度の報酬改定に向けてやるべき事はたくさんありますが、 より良い支援を行っていくためにも事業の安定やスタッフの確保は必須です。
一つ一つ確実に押さえて安定した運営を目指していきましょう。